2021.02.02
ベーキング処理のタイミング
熱処理した鋼をメッキするときにおこないます。
(CAP・ハイテンションボルト・タッピンネジ・ドリルビスなど)
熱処理した鋼は組織が粗くなっています。メッキをするとき硫酸や塩酸などの酸に浸けると粗くなった表面から水素が入りこみます。鋼の中に入った水素はそのままにしておくと時間の経過と共に体積が大きくなり、頭飛び・破断・折れなどの原因となります。ですから、水素が入ってすぐのメッキ工程の途中で鋼を加熱して水素を追い出します。
鋼に水素が入ってもろくなることを「水素脆性」といい、
ベーキング処理のことを「脆性処理」ともいいます。(脆=もろい)
処理を施された高炭素鋼に対し、電気亜鉛メッキ工程とクロメート処理工程の間に行います。
2021.02.02
ベーキング処理とは
「ベーキング処理」とはメッキ工程の途中でボルトやネジなどを180℃~200℃の炉の中で4~8時間加熱処理することをいいます。
英語のbake bakingに〔焼く〕という意味があるので勘違いしやすいのですが、「熱処理」とは異なります。
2021.02.02
ネジやボルトへの「熱処理」の方法
タッピンネジやドリルネジなどにおこなう「浸炭焼き入れ」と6角穴付ボルトやハイテンボルトなどにおこなう「調質焼き入れ」 が代表的です。
「浸炭焼き入れ」
タッピンネジは相手材にタップをたてなければいけないので、 ねじ山をより硬くする必要があります。そのため、鋼の表面をより硬くする「浸炭焼き入れ」を行います。 タッピンネジの材質のSWCH16A・18Aは浸炭ガス層の中で(浸炭ガス-熱処理される鋼に炭素を与えるガス)
900℃近くで「焼き入れ」をすると炭素をよく吸収し表面が特に硬くなります。この表面の硬くなった層を「浸炭層」と言います。 さらに、安定した組織にするために「焼き戻し」を行います。焼き戻し温度は300゜C~400゜Cです。ちなみに、SWCH16Aの「16」は、0.16%の炭素を含んでいる ことを表します。鋼は炭素が多いほどより硬くなります。
6角穴付ボルトは「強度区分12.9」や「強度区分10.9」の高強度を保証しなければいけないので、「硬さ」だけでなく破断をおこさないための「ねばり」も求められます。そのため「ねばり」のある組織をつくる「調質焼き入れ」を行います。6角穴付ボルトの材質のSCM435は炭素量が多く焼き入れ性が優れていて800℃~900℃で「焼き入れ」後、450℃~550℃で 「焼き戻し」すると硬くてねばりのある組織に調質されます。(ソルバイト組織)
ちなみに、SCM435の「435」は、0.35%の炭素を含んでいることを表します。
2021.02.02
焼き入れ、焼きなまし、焼き戻しの違い
「焼き入れ」は鋼を730℃以上に熱くして急冷します。
「焼き入れ」は鋼を730℃以上に熱くして急冷します。
「焼きなまし」は鋼を730℃以上に熱くしてゆっくり冷します。
「焼き戻し」は鋼を730℃以下に熱くして急冷します。
焼き戻し温度が低いほど鋼は硬くなります。
2021.02.02
代替処理とは
電気亜鉛メッキの上に化成被膜(化学反応により生成する保護皮膜のこと)を形成する処理です。鉄素材に亜鉛メッキをすると亜鉛が自ら腐食する事で鉄素材を守ります。しかし、亜鉛はそのままでは変色や腐食しやすいので、その上に化成皮膜を形成するクロメート処理を施す事で防錆効果を高める事ができます。近年クロメート皮膜にふくまれている六価クロムが人体に悪影響を及ぼすとして、代替品の三価クロムを使用した皮膜や全くクロムを含まないクロムフリーの皮膜が登場し注目を集めています。今回は、クロメート処理のように、化成皮膜を形成する鍍金(メッキ)の紹介をさせていただきます。
正式名称は有色クロメート。色は光沢のある黄色で、黄褐色に近いものほど耐食性が強いです。
皮膜の密着性も良く、耐食性も高いので広く使われており最も代表的なメッキです。
正式名称は光沢クロメート 。色は青みがかった銀色で光沢を主としたメッキです。有色クロメートに比べ耐食性は幾分劣ります。
ブラッククロメート(BC)とも呼ばれるメッキで光沢がある黒色をしています。黒い色を出す為に皮膜中に銀を含んでい為耐食性は有色クロメートより劣ります。
2021.02.02
その他の表面処理とは
ニッケルとりんの合金メッキのことです。溶液中での還元反応を利用して品物の表面にメッキ金属を析出させる処理法です。膜厚のムラなく均一にメッキでき、また非金属にもメッキできます。
ステンレスが錆びにくいのは、ステンレス中に含まれるクロムが酸素と結合して表面に酸化クロム被膜(不働態被膜)を作るからですが、稀硝酸に浸すことで、この不働態被膜を化学的に作る処理のことを「パシペート処理」といいます。
ステンレスは熱伝導率が低く、熱膨張係数が大きいため、締結作業を行うとその摩擦熱により焼き付き(かじりつき)が発生し雄ネジと雌ネジが互いに食い込んで回せなくなることがあります。それを防ぐために表面に潤滑被膜を施す処理が焼き付き防止コートです。一般的にフッ素樹脂をベースにしており、Sコート等各社独自の名前が付けられています。
アルミニウム素地に、電解で得る酸化被膜で、耐食性、耐摩耗性をもたせる処理のことです。この被膜を染色することにより装飾性をもたせることも出来ます。なお、アルマイト処理を施すと通電性はなくなります。
「ベーキング」(表面処理ではありませんが参考として)
酸洗いや電解によって発生した水素が金属の内部に入り込み、組織をもろくする(水素脆性)のを防ぐ為に180゜C~200゜Cで4~8時間加熱して水素を追い出す処理のことです。熱処理を施された高炭素鋼に対し、電気亜鉛メッキ工程とクロメート処理工程の間に行います。
2021.02.02
装飾用表面処理とは〈その他の色〉
《その他色合わせ》
巷には様々な色があふれています。そこでネジもそれらの色に合わせる必要があるようです。
ネジは締結後、目に見える部分は頭部だけということが多いため頭部だけを塗装します。頭部に上から塗料を吹き付け、加熱して密着させる焼付塗装を施します。六角ボルトの場合、上から一度塗料を吹き付けるだけでは側面には行き渡らず、工数が増えるのでコスト高になります。
前述のラスパートやポリシールも塗料を用いますので色合わせが出来ます。
電気亜鉛メッキを貼った後、一旦、乾燥させます。その後クロメート処理を施します、次に薄いアルカリでクロメート被膜の表面を少しはがします。こうして出来たクロメート被膜上の小さな穴に染料を染め込んで色づけします。
亜鉛は酸化しやすい金属で、鉄に亜鉛を貼ると、亜鉛が酸化することにより鉄を酸化から守ります。しかし亜鉛は酸化するともろくなり、このままでは実用的ではありません。そこでクロム酸を用いて亜鉛の表面に薄いクロム酸と亜鉛の被膜を作り、亜鉛を酸化から守ります。この処理のことをクロメート処理といい、できた被膜をクロメート被膜といいます。
2021.02.02
装飾用表面処理とは〈ブラック色〉
《ブラック色》
AV機器等には黒色が多く使われているようです。また、相手材に対しネジの色の方が濃いとネジが目立たないので、ネジを目立たなくするために茶色の相手材に対し黒いネジというパターンもあるようです。
下地に電気亜鉛メッキを貼り、硝酸銀などを含んだ溶液でクロメート処理をすると黒色になります。銀が黒色を作っています。比較的安価に黒色のメッキができるため広く利用されています。耐食性は有色クロメートや光沢クロメートより劣ります。「酢酸系」と「燐酸系」があり、「酢酸系」は仕上がりは綺麗ですが耐食性が悪く、「燐酸系」は耐食性は良いが色が悪い。弊社の物は酢酸と燐酸を混ぜ、中間をねらっています。弊社では「BC」と表しています。
下地用ニッケルメッキを貼り、その上にニッケルメッキを貼り、さらにその上に黒色の亜鉛-ニッケルの合金メッキを貼ります。このままでは変色しやすいので、さらにニスで変色を防ぎます。耐食性はニッケルメッキとほとんど同等です。輝きのある黒色に仕上ります。
下地用ニッケルメッキを貼り、その上にニッケルメッキを貼り、さらにその上に黒色のクロムメッキを貼ります。 タコ掛けと呼ばれる1本づつ吊す方法でメッキをしています。そのためコスト高ですが重厚な漆黒の色合いに仕上ります。耐食性もクロームメッキと同様優れています。
前述のパーカーも色合わせの為に用いられることがあるようです。
ステンレスを特殊な薬品で黒く着色処理することでステンレスに対する「黒染め」ということです。
2021.02.02
装飾用表面処理〈ブロンズ色〉
《ブロンズ色》
近年アルミサッシ等で人の心を落着ける茶色が増えています。
いわゆるGBメッキ。Gはジャーマン、Bはブロンズまたはブラウンの略だとか。ドイツ軍の戦車の色という説もあります。 GBメッキは鉄とステンレスでは処理方法が違い、鉄の場合、下地に銅メッキを貼った後、特殊な薬品で色づけ研磨をします。 ステンレスの場合は熱処理によりステンレス自体を変色させます。
2021.02.02
装飾用表面処理〈ゴールド色〉
《ゴールド色》
何と言っても一番ゴージャスな色はゴールドです。
下地にニッケルメッキを貼り、その上に本物の金を貼ります。 金は錆びません。また熱や電気を非常によく通しますので電子部品等に利用されます。 上棟式用の金ボルト等の装飾品にも利用されます。
下地にニッケルメッキを貼り、その上に黄銅を貼ります。 黄銅は銅と亜鉛の合金です。金と色合いが似ているので、これを代金メッキともいいますが、金と比べ黄色っぽい色です。
下地にニッケルメッキを貼り、その上に黄銅よりも銅の比率が高い銅と亜鉛の合金を貼ります。黄銅メッキに比べ赤みがあり、より本物の金に近い色合いに仕上ります。
下地に電気亜鉛メッキを貼り、その上に染色タイプのクロム酸のクロメート被膜で金色に色づけします。代用金メッキの色合いに比べやや安っぽい感じのする色で、クレヨンの金色のような色です。なお代用金もゴールドも色合いとして本金メッキの代用として利用されますが、金属としての金の性質はないので注意が必要です。
前述の有色クロメートも最も安価なゴールド色と言えます。
黄銅に行う酸洗いで、キラキラ輝く光沢に仕上ります。 耐食性はよくありません。