2021.03.16

切削加工に使用される鋼

「硫黄快削鋼鋼材」 SUM**
一般的に「快削鋼」と呼ばれています。S(いおう)を多く添加することによって被削性を向上させた低炭素鋼です。またPb(鉛)の添加によってさらに被削性を向上させたものもあります。引張強さの規定はありません。切削は良好ですが、曲げ加工には向きません。 また溶接加工性も良くありません。

「一般構造用圧延鋼材」 SS**
低炭素鋼です。C(炭素)とMn(マンガン)の成分量にとくに規定は無く、P(りん)とS(いおう)の上限が0.05%と定められているだけです。引張強さの規定はあります。溶接加工も可能で、曲げ加工も可能です。代表鋼種は、SS400です。
2021.03.15

冷間圧造用炭素鋼の種類

「キルド鋼」と「リムド鋼」があります。
溶けている素材(溶鋼)を固めるときの方法でキルド鋼とリムド鋼に分かれます。キルド鋼には「アルミキルド鋼」と「シリコンキルド鋼」がありますが、ねじには「アルミキルド鋼」を一般に使用 します。なお、SWCHはC(炭素)の含有量によって数十種類に分かれますが、引張強さの規定はありません。
「キルド鋼」
キルド鋼とは、溶鋼の中にアルミニウムなどを添加し充分脱酸(溶鋼中に含まれている酸素を除去する事)を行って鋳込んだ鋼塊(鋼のかたまり:インゴッド)から作った鋼材のことです。脱酸が充分に効いているので、固まるときガスの放出がなく静 かに凝固します。つまり死んだように静かな鋼というのでキルド (Killed)鋼と呼ばれています。気泡がなく組織は大体均一で優良な性質を備えているため、高級鋼や合金鋼は全てキルド鋼で作られています。

例えば、タッピンネジに使うSWCH18Aなどがあります。後ろにつく18Aの18とは0.18%のC(炭素)が含まれ、Aはアルミキルド鋼という意味です。
「リムド鋼」
リムド鋼は、溶鋼をそのまま鋼塊に鋳込んだものです。脱酸用の添加材を使用していないため、鋳込み及び凝固中にガスを放出し、火花を散らしながら、外側から固まり、表面にリム層という層ができます。リムとは「ふち」のことでリムド鋼とはふち付き 鋼ということになります。キルド鋼に比べると若干不均一ですが使用上は問題なく、一般のボルトやナットに大量に使用されています。
リムド鋼にはSWCH10Rなどがあります。 この場合の10Rは 0.10%のC(炭素)が含まれ、Rはリムド鋼という意味です。
2021.03.14

SWRCHとSWCHの違い

SWRCHからSWCHを作ります。SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材

SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材
         ||
Carbon steel wire rods for cold heading and cold forging
製鋼メーカー(神戸製綱や新日鐵など)で作る線の元材料です。

SWCHは冷間圧造用炭素鋼線
         ||
Carbon steel wire for cold heading and cold forging
伸線メーカー(オーアンドケーなど)で作るネジの材料です。

Rとは「rods=材料」のことです。 「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」です。
2021.03.13

小ネジ、タッピングネジの材料

「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」です。
SWCHとはCarbon steel wire for cold heading and cold forging


Carbon steel 炭素鋼
wire 線
cold 冷間
heading 圧造

の頭文字をとったものです。
2021.03.12

鉄と鋼の違い

鋼とは、2%以下のC(炭素)を含んだ鉄の合金で、ほかにもMn(マンガン)やP(リン)S(硫黄)などを微量に含んでいます。通常、鉄と呼んでいるのは、すべてこの鋼です。よほど特殊な目的以外、C(炭素)を含まない鉄は使用しません。先ほどの製綱メーカーも、実は鉄ではなく鋼を取り出しています。もちろん、ネジもこの鋼から作られています。
2021.03.11

鉄とは

元素記号Fe  電子番号26  原子量55.85  比重7.86

鉄という金属は自然界に単体で存在することはめったにありません。化合物として土壌・岩石・鉱物などの中に存在します。なぜ単体で存在しないかというと、Fe(鉄)原子はそれ自体では非常に不安定なため、酸素と結びついた酸化鉄の状態で存在しているからです。ですから製綱メーカーが鉄鉱石から鉄を取り出すときには、不純物と同時に酸化鉄から酸素も取り除いています。取り出した鉄を放っておくと、安定した状態に戻ろうとしてすぐに酸素と結び付きます。つまりさびてしまうのです。
2021.03.10

材料記号の意味

※参考  鉄鋼材料では、種類記号に続けて製造方法を示す記号が付記されることがあります
-D-(Drawning) 冷間引き抜きの意味

-T-(Cutting) 切削の意味

-G-(Grinding) 研磨の意味

非鉄金属では硬さを表すのに、軟質は「O」・硬質は「H」・
その中間の1/4H・1/2Hなどで表します。
2021.02.22

JIS耐熱鋼の性質と用途

ステンレス

分類
種類の記号
概略組成    
素質と用途
オーステナイト系
SUH 309
22 Cr-12 Ni-0.2 C
980℃までの繰り返し加熱の耐える耐酸化鋼。加熱部品、重油バーナー。
SUH 310
22 Cr-20 Ni-0.2 C
1035℃までの繰り返し加熱に耐える耐酸化鋼。炉部品、ノズル、燃焼室。
SUH 660
15 Cr-25 Ni-1.2 C
Mo-V-2 Ti-Al-B-0.06C
700℃までのタービンローター、ボルト、ブレード、シャフト。
マルテンサイト系
SUH 3
11 Cr-2 Si-1 Mo-0.4C
高級吸気弁、低級排気弁、魚雷、ロケット部品。予熱焼室。
オーステナイト系
SUH 309S
22 Cr-12 Ni-0.6 C
SUS304より耐酸化性が優れ、980℃までの繰り返し加熱に耐える。炉材。
SUH 310S
22 Cr-20 Ni-0.06 C
SUS309 Sより耐酸化性が優れ、1035℃まで耐える。炉材、自動車排ガス浄化装置用材料。
SUH 316
18 Cr-12 Ni-2.5 C Mo-0.06C
高温において優れたクリープ強度をもつ。熱交部品。高温耐食用ボトル類。
SUH 317
18 Cr-12 Ni-3.5 C Mo-0.06C
高温において優れたクリープ強度をもつ。熱交換部品。
SUH 321
18 Cr-9 Ni-Ti-0.06 C
400~900℃の腐食条件で使われる部品。高温用接構造品。
SUH 347
18 Cr-9 Ni-Nb-0.06 C
400~900℃の腐食条件で使われる部品。高温用接構造品。
フェライト系
SUH 405
13 Cr-Al-0.06 C
焼入硬化が少ない。ガスタービンコンプレッサーブレード、焼なまし箱、焼入れ用ラック。
SUH 430
18 Cr-0.1 C
850℃以下の耐酸化用部品。放熱器、炉部品、オイルバーナー。
マルテンサイト系
SUH 403
13 Cr-低 Si-0.1℃
高温高応力に耐える。タービンブレード、蒸気タービンノズル。
SUH 410
13 Cr-0.1 C
800℃以下の耐酸化用。
析出硬化系
SUH 630
17 Cr-4 Ni-4 Cu-Nb-0.05 C
ガスタービンコンプレッサープレート、ガスタービンエンジン周り材料高温用ベルト。
2021.02.21

JISステンレス鋼の性質と用途

ステンレス

分類
種類の記号
概略組成
素質と用途
オーステナイト系
SUS 303
18 Cr-8 Ni-高S
被削性、耐焼付性向上。自動盤用として最適。ボルト・ナット。
SUS 304
18 Cr-8 Ni
ステンレス鋼・耐熱鋼として最も広く使用。食品設備、一般化学設備、電子用建築、家庭用品。
SUS 304L
18 Cr-9 Ni-低C
304の極低炭素鋼、耐粒界腐食性に優れ、溶接後熱処理出来ない部品類。
SUS 304N2
18 Cr-8 Ni-N-Nb
304にN及びNbを添加し、同上の特性をもたせた。用途は304N1と同じ。
SUS 304J3
18 Cr-8 Ni-2 Cu
304にCuを添加し、冷間加工性と非磁性を改善。
SUS304とSUSXM7と中間成分で、冷間加工用ボルト・ナットなど。 
SUS 305
18 Cr-12 Ni-0.1C
304に比べ、加工硬化性が低い。へら絞り、特殊引抜き、冷間圧造用。
SUS 305J1
18 Cr-13 Ni-0.1C
305の低炭素鋼で、CrとNiの量を調節した加工硬化性が低い改良鋼。
冷間圧造用など。
SUS 309S
22 Cr-12 Ni
耐食性が304より優れているが、実際は耐熱鋼として使われることが多い。
SUS 310S
25 Cr-20 Ni
耐酸化性が309Sより優れており、実際は耐熱鋼として使われることが多い。
オーステナイト系
SUS 316
18 Cr-12 Ni-2.5 Mo
海水をはじめ、各種媒質に304より優れた耐食性がある。耐孔食材料。
SUS 316L
18 Cr-12 Ni-2.5 Mo-低C
316の極低炭素鋼、316の性質に耐粒界腐食性をもたせたもの。
SUS 316N
18 Cr-12 Ni-2.5 Mo-N
316にNを添加し、延性の低下を抑えながら強度高め、材料の厚さ減少効果がある。耐食性の優れた強度部材
SUS 316LN
18 Cr-12 Ni-2.5 Mo-N-低C
316LにNを添加し、同上の特性をもたせた。用途は、316Nに準じるが、耐粒界腐食性に優れる。
SUS 317
18 Cr-12 Ni-3.5 Mo
耐孔食材が316より優れている。染色設備材料など。 
SUS 317L
18 Cr-12 Ni-3.5 Mo-低C
317の極低炭素鋼、317に耐粒界腐食性をもたせたもの。
SUS 321
18 Cr-9 Ni-Ti
Tiを添加し、耐粒界腐食性を高めたもの。装飾部品には推奨できない。
SUS 347
18 Cr-9 Ni-Nb 
Nbを含み、耐粒界腐食性を高めたもの。
SUS XM7
18 Cr-9 Ni-3.5 Cu 
304にCuを添加して冷間加工性の向上を図った鋼種。冷間圧造用。
フェライト系
SUS 405
13 Cr-Al
高温から冷却で著しい硬化を生じない。タービン材、焼入用部品。クラッド材。
SUS 430
18 Cr
耐食性の優れた汎用種類。建築内装用、オイルバーナー部品。家庭用器具。家電部品。
SUS 430F
18 Cr-高S
430に被削性を与えたもの。自動盤用、ボルト・ナット類。
マルテンサイト系
SUS 403
13 Cr-低 Si
タービンプレート及び高応力用として良好なステンレス鋼・耐熱鋼。
SUS 410
13 Cr
良好な耐食性、機会加工性をもつ。
SUS 420 J2
13 Cr-0.3C
420J1より焼入れ後の硬さが高い種類。刃物、ノズル、弁座、パルプ、直尺など。
SUS 440 C
18 Cr-1C
すべてのステンレス鋼・耐熱鋼中最高の硬さを持つノズル、ベアリング。
析出硬化系
SUS 630
17 Cr-4 Ni-4 Cu-Nb
Cuの添加で析出硬化性をもたせた種類。シャフト類、タービン部品、積層板、スチールベルト。
2021.02.20

高級鋼の種類

「機械構造用炭素鋼」 S**C
高炭素鋼。SWCHと構成成分は同等でC(炭素)を多く含む鋼。引張強さの規定があります。「S45C」は0.45%、「S35C」は0.35%のC(炭素)を含むことを表しています。焼き入れ性がよく強度区分8.8などのボルトに使用します。

「機械構造用合金鋼」
「ニッケルクロム鋼鋼材」 SNC***
「ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材」 SNCM***
「クロムモリブデン鋼鋼材」 SCM***
「高温用合金鋼ボルト材」 SNB**高炭素鋼にNi(ニッケル)Cr(クロム)とMo(モリブデン)などを添加して焼き入れ性を良くした合金鋼です。焼き戻しに対する特性も良いので、熱処理(調質)をして高強度を出すことができます。
SWCH10Rで作ったボルトが通常、強度区分4.8なのに対して、SCM435で作って調質した六角穴付ボルトは強度区分12.9で簡単に言うと3倍の強さがあります。

ねじ関係の鉄の材料について整理してみると

名称
記号
用途
軟鋼線材
SWRM
釘、リベット、ワリピンなど
硬鋼線材
SWRH
バネ座金など
冷間圧造用炭素鋼線
SWCH
小ねじ、ボルト、ナット タッピンねじなど
機械構造用炭素鋼
S**C
ボルト、ナットなど
機械構造用合金鋼
SCM
キャップ、高力ボルトなど
冷間圧延鋼
SPCC
平座金など