2021.03.21
かじり(焼き付き)とは
ステンレスのボルトやナットを電動機などで締め付けると、ねじのはめ合い部で摩擦による熱が発生します。その熱によってねじ部が膨張し、雄ねじと雌ねじが密着して動かなくなる状態を「かじり(焼き付き)」と言います。 トルク(回転力)によっては、ボルトが折れることもあります。
ステンレスは、熱伝導率が低く、SUS304…鉄の1/3
魔法瓶、お鍋、お風呂などに使用
熱膨張率が高いため、 SUS304…鉄の1.5倍
鉄と同じ程度の摩擦でも熱が発生しやすく、その熱による変形や歪みも大きくなります。
フッ素系樹脂(無色透明)を表面にコーティングすると ねじ部の摩擦が小さくなり、かじり防止となります。
2021.03.20
ステンレスの磁性
代表的な鋼種で例をあげますと
マルテンサイト系
SUS410=13%Cr + 87%Fe 磁石につく
フェライト系
SUS430=18%Cr + 82%Fe 磁石につく
オーステナイト系
SUS304=18%Cr + 8%Ni + 74%Fe 磁石につかない
SUS304が一番代表的ステンレス鋼ですから、ステンレス は磁石につかないというイメージが一般的です。
Fe(鉄) →磁性 大
Ni(ニッケル) →磁性 小
Cr(クロム) →磁性 無
磁性の大きいFe(鉄)の含有率が低くなるとステンレスは磁石につかなくなります。 しかし、SUS304でも条件次第で磁石についたり反応したりすることがあります。 ステンレスを加工すると酸化クロム膜を再生するためにCr(クロム) が表面に出てしまい内部の含有率が低くなります。すると相対的にFe(鉄)の含有率が高くなり、磁性が生じます。これは加工度合の大きい箇所で部分的にもおこります。
例) ワッシャー(圧延加工・プレス加工)
6角穴付き止めネジ(穴圧造加工・全身ねじ転造加工)
単重に対して加工度合が大きい商品は磁性を生じることがあります。
2021.03.19
Cr(クロム)の特徴
Cr(クロム)は鉄より酸素と結びつきやすいという特徴があります。
鉄に12%以上のCr(クロム)を含ませると、鉄が酸化するよりも先にCr(クロム)が酸化し、表面全体に酸化クロムの膜ができます。 この膜は、無色透明でとても薄い(約50Å Å=1/100000000cm) ので肉眼では識別できません。しかし、この膜は化学的に安定で (化学変化しにくい)とても強固です。また、ち密で酸素を通さない ので酸化鉄(さび)の発生を防ぎます。 この、酸化クロムの膜で表面が保護されている状態を「不働態化」 していると言います。
この酸化クロム膜は加工・切断などでキズついても、Cr(クロム)が適量(12%以上)あれば空気中の酸素と結合してすぐ再生します。 ただし、この膜を再生するときにステンレス内部のCr(クロム)の含有率は低くなっていきます。
2021.03.18
Cr(クロム)の働き
Crは「さびを防ぐ」働きがあります。
「さびない鉄」がステンレスです。 しかし、条件次第ではさびてしまいますので正確には 「さびにくい鉄」ということになります。 (さびの程度はSUS410でも鉄の1/200) 鉄の「さび」とは、鉄と酸素が結びついて「酸化鉄」が発生することを言います。
2021.03.17
ステンレスとは
「12%以上のCr(クロム)を含む鉄の合金鋼」です。
つまり、ほとんど鉄です。 ですから、鉄の特性は一見隠れていますが、条件次第で顔を出します。 (さびる・磁石につくetc.)
マルテンサイト系 SUS410=Cr13%
フェライト系 SUS430=Cr18%
オーステナイト系 SUS304 =Cr18%+Ni8%
SUSXM7=Cr18%+Ni9%+Cu3.5%
2021.03.16
切削加工に使用される鋼
「硫黄快削鋼鋼材」 SUM**
一般的に「快削鋼」と呼ばれています。S(いおう)を多く添加することによって被削性を向上させた低炭素鋼です。またPb(鉛)の添加によってさらに被削性を向上させたものもあります。引張強さの規定はありません。切削は良好ですが、曲げ加工には向きません。 また溶接加工性も良くありません。
「一般構造用圧延鋼材」 SS**
低炭素鋼です。C(炭素)とMn(マンガン)の成分量にとくに規定は無く、P(りん)とS(いおう)の上限が0.05%と定められているだけです。引張強さの規定はあります。溶接加工も可能で、曲げ加工も可能です。代表鋼種は、SS400です。
2021.03.15
冷間圧造用炭素鋼の種類
「キルド鋼」と「リムド鋼」があります。
溶けている素材(溶鋼)を固めるときの方法でキルド鋼とリムド鋼に分かれます。キルド鋼には「アルミキルド鋼」と「シリコンキルド鋼」がありますが、ねじには「アルミキルド鋼」を一般に使用 します。なお、SWCHはC(炭素)の含有量によって数十種類に分かれますが、引張強さの規定はありません。
「キルド鋼」
キルド鋼とは、溶鋼の中にアルミニウムなどを添加し充分脱酸(溶鋼中に含まれている酸素を除去する事)を行って鋳込んだ鋼塊(鋼のかたまり:インゴッド)から作った鋼材のことです。脱酸が充分に効いているので、固まるときガスの放出がなく静 かに凝固します。つまり死んだように静かな鋼というのでキルド (Killed)鋼と呼ばれています。気泡がなく組織は大体均一で優良な性質を備えているため、高級鋼や合金鋼は全てキルド鋼で作られています。
例えば、タッピンネジに使うSWCH18Aなどがあります。後ろにつく18Aの18とは0.18%のC(炭素)が含まれ、Aはアルミキルド鋼という意味です。
「リムド鋼」
リムド鋼は、溶鋼をそのまま鋼塊に鋳込んだものです。脱酸用の添加材を使用していないため、鋳込み及び凝固中にガスを放出し、火花を散らしながら、外側から固まり、表面にリム層という層ができます。リムとは「ふち」のことでリムド鋼とはふち付き 鋼ということになります。キルド鋼に比べると若干不均一ですが使用上は問題なく、一般のボルトやナットに大量に使用されています。
リムド鋼にはSWCH10Rなどがあります。 この場合の10Rは 0.10%のC(炭素)が含まれ、Rはリムド鋼という意味です。
2021.03.14
SWRCHとSWCHの違い
SWRCHからSWCHを作ります。SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材
SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材
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Carbon steel wire rods for cold heading and cold forging
製鋼メーカー(神戸製綱や新日鐵など)で作る線の元材料です。
SWCHは冷間圧造用炭素鋼線
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Carbon steel wire for cold heading and cold forging
伸線メーカー(オーアンドケーなど)で作るネジの材料です。
Rとは「rods=材料」のことです。 「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」です。
2021.03.13
小ネジ、タッピングネジの材料
「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」です。
SWCHとはCarbon steel wire for cold heading and cold forging
Carbon steel 炭素鋼
wire 線
cold 冷間
heading 圧造
の頭文字をとったものです。
2021.03.12
鉄と鋼の違い
鋼とは、2%以下のC(炭素)を含んだ鉄の合金で、ほかにもMn(マンガン)やP(リン)S(硫黄)などを微量に含んでいます。通常、鉄と呼んでいるのは、すべてこの鋼です。よほど特殊な目的以外、C(炭素)を含まない鉄は使用しません。先ほどの製綱メーカーも、実は鉄ではなく鋼を取り出しています。もちろん、ネジもこの鋼から作られています。